ヤッサンNetwork 第2回


未来の医療はどうあればいいのか! 東大病院から熱く発信

~未来医療研究会

 

東大医師が幅広く未来の医療を語り合う研究会を設立

 

  世の中は、一人のとんでもないカリスマが出てきて強引に変化させることもできるが、それよりも、多くの人の力が川の流れのように結集されていって、いつの間にか大河になっているというのが理想ではないだろうか。人の力が結集されるために必要不可欠なものは、小さな力をつなげて大きな力にする才覚だ。明治維新では、坂本竜馬が新しい日本を作ろうという力を集め、歴史を動かした。その才覚とは、高い志と揺るぎのない覚悟とそれを実現させる意志・行動力、コミュニケーション力。それが人を引き寄せ、世の中の流れを変えていく力となるのだ。

 知り合いの編集者から、「とても志の高い医師と会った」と聞かされ、私は、その医師に会いたくてたまらなくなった。すぐに縁がつながった。OfficeOharadaで作った神原康弥さんの詩集「コウヤのロマン さくさくさく」のことをフェイスブックで見たので注文したいと、彼からメールがあったのだ。ぜひ、お会いしたいとメールを返すと、彼は自分が木村秋則さんのファンで、私の書いた「木村さんのリンゴ」という本も読んでくれたと返事をくれた。これは用意された縁だと、私の心は久々に昂った。

 彼の名前は稲葉俊郎。東大病院の循環器内科の医師をしている。東大正門近くのレトロな喫茶店で稲葉医師と会い、話を聞いているうち、私は「こういう人の出現を待っていたんだ」と、うれしさが込み上げてきた。35歳という若さではあるが、彼の魂はとても熟していると、私には感じられた。

 さて、何から話を聞こうかと戸惑っていると、彼は、「意識がないと見られている人とのコミュニケーション」についての話を始めた。今、私が一番興味をもっているテーマだ。稲葉医師は、コーマワークという、アーノルド・ミンデル博士が物理学と心理学を応用して構築した独自の心理学(プロセス指向心理学)のひとつの手法を使って、脳性マヒや脳血管障害の後遺症などで意識がないとされている人たちとコミュニケーションをとろうとしている。千葉のある病院では、医療行為のひとつとしてコーマワークが取り入れられ、意識障害をもった患者さんや家族の人たちに希望を与えている。稲葉医師も、スタッフの一人として、昏睡状態の人とのコミュニケーションに取り組んでいるのだそうだ。

 こうした話はずっと聞いていたいのだが、ここでは、彼の「つなぎ役」としてのとても大事な働きを、「行動派」として紹介したいと思うので、コーマワークについては、別の機会にご紹介できればと思う。まさに、彼は高い志と揺るぎない覚悟をもったつなぎ役だ。ただ、その役割を果たす上で、コミュニケーションはとても重要になってくる。コーマワークをやっていることは、新しい医療を作ろうとする、彼の重要な仕事と無関係ではないのだ。

 新しい医療を、稲葉医師は「未来医療」と呼び、未来医療研究会という集まりを開催している。未来医療というのは、稲葉医師だけが言っている言葉ではない。いろいろな大学で「未来医療」という分野での研究が行われているが、その多くは先端医療のことを言う。あるいは、代替療法をやっている方が「未来医療」という言葉を使っている場合は、ある特定の治療法を広げるためのものだったりする。

 私が、稲葉医師の出現を「待っていた」と感じたのは、彼の考える未来医療は、受け皿が果てしなく広いからだ。対象は、ありとあらゆる治療法。いや、治療法にとどまらない。人間の体や心、さらには魂にいい影響を与えるものなら、すべてが未来医療の対象になるのである。氣はもちろん、死後の世界、霊魂、輪廻転生といった、これまでの医療が受け入れなかったものも、稲葉医師の未来医療は、大きな懐で迎え入れてくれるのである。

 こうした研究会を、東大病院の医師が主催していることに大きなインパクトがある。東大病院の医師で大きなインパクトと言えば、矢作直樹医師の「人は死なない」(バジリコ)という本だろう。現役の医師が、それも東大の教授が、霊的な世界を肯定する本を書いたことはとてもセンセーショナルで、そしてこの本がたくさんの人に読まれたというのは、時代が見えない世界を認めるという方向に動いていることを感じさせられる出来事だ。同時に、この本が果たした大きな役割は、矢作医師と同じように、死後の世界、霊の存在があると感じてきた医師たちが、自分の体験や考え方を声に出して語り出したことだ。これまで、科学者である医師が、非科学的とされている霊のことを語るというのはタブーだった。そのタブーが、「人は死なない」という本が出たことで、ガラガラと音を立てて崩れ始めているのである。実に痛快な出来事だ。

 これまでにもこのような本がなかったわけではない。しかし、出版されたタイミングといい矢作医師の肩書や人柄、もちろん内容も、まさしくツボにはまったと言える。稲葉医師も、矢作医師とは親しい関係で、この本が出版されるに当たっては、相当後押しをしたようだ。

 東大医学部教授が書いた死後の世界の本によって、医療界でもスピリチュアルな世界への意識変革の戸が開かれた。それを具体的な動きとして形にしようとしているのが、稲葉医師の未来医療研究会ではないかと、私は思っている。


311の震災で西洋医学だけの医療ではいけないと痛感

 

 大きな変革期には、突き動かされるように荒れ地に飛び込んでいく人が必要だ。汗を流し、傷だらけになって道を作る。そこには、損得では止められない力が働く。矢作医師も稲葉医師も、自分の意志を超えた何ものかに動かされて荒れ地に飛び込んだ、選ばれし勇者たちだ。たくさんの勇者たちが全国に点在している。彼らの力を集めればどんなにかすばらしいことができるだろう。稲葉医師に出あって夢が広がってきた。

 もともと稲葉医師にとって、スピリチュアルな世界は当たり前のものだったと言う。何しろ、物心ついたときから、「人は何のために生まれてきたのか」と考えてきたくらいだ。そして、医師になったのも、親が医師だったということもあったが、それ以上に、生命の秘密を探るには医師という職業につくのが一番の近道だと考えたからだった。東洋哲学を学んだり、瞑想をしたりもしてきたから、医療の中に西洋医学以外の治療法が入ることも、当然のこととして受け入れてきた。

「西洋医学で勉強することがたくさんありましたから、それ以外の治療法を学ぶ機会は限られていました。それでも、チャンスがあれば、いろいろな勉強をしました。医師になって、患者さんから元気をいただけるので手を当ててほしいと言われることがよくあります。今思えば、あれはヒーリングの一種なのだと思いますが、当時はよくわからず、患者さんに求められたときだけ、純粋に相手を思い、無心で手当てをすることもありました」

と言う。

稲葉医師が、未来医療研究会を作ろうと決心したきっかけは311の大震災だった。

「ボランティアで被災地の調査の手伝いをしていて、土日には自費で福島県へ行っていました。病院も壊れ、機材も流され、薬もない、注射器もないという状態でした。そういうところで医療者というのは無力でした。薬も道具もないから何もできないと言っているばかりなのです。私は、それは違うんじゃないかと思いました。プロなのに、病院も道具もないので何もできませんというのはおかしいじゃないですか。

いざと言うときに、何もなくてもできることを、プロの医療者は知ってないといけないと痛感しました。エネルギーヒーリングでもいいし、植物を煎じるとか、カウンセリングで癒すとか、いろんなことが本来できるはずなのです」

 ここはとても重要なポイントだと思う。非常事態の中でこそ、物事の真理が見えてくることはよくあるものだ。西洋医学という枠の中だけで考えると、医療の可能性は非常に限られたものになってしまう。西洋医学というのは、コインの片面でしかない。それを表とすれば、裏に当たるのが、代替療法ということになるだろう。西洋医学も含めて、さまざまな治療法がつながってこそ、本当に人の役に立つ医療となる。放射能による健康被害にどう対処するかも、これから重要なテーマになってくる。西洋医学だけでは対処できないのはもう明らかで、さまざまな代替療法と連動した動きが必要になってくるはずだ。災害や事故はない方がいいに決まっているが、起こったものは仕方がない。それをどう生かしていくか。そこに本当の復興があるのではないだろうか。

さらに、そうしたさまざまな医療の連動に加えて、どんなに医療が進もうが、人は必ず死を迎えるわけで、「死」も視野に入れなければ、未来医療というジグソーパズルは完成しないのである。

「木村さんともお会いするチャンスがありました。そのときに、現代医療における自然栽培をしないといけないというインスピレーションがありました。木村さんは、無農薬でリンゴを栽培して有名になりましたが、木村さんがおっしゃっているのは土作りの大切さです。医療も、土作りをしないといけません。いい土壌を作って、そこへ種をまけば、自然に芽が出て、木になり、すばらしい花や実をつけることになります。その土壌作りをやろうと決心しました」(稲葉医師)

 木村さんは土を徹底的に調べた。いい土には微生物がたくさんいる。雑草も重要な働きをしている。小動物がいる。とにかく、土の中には宇宙が出来上がっているのだ。医療でもそういう土壌を作らないといけない。稲葉医師はそう考えて行動を起こした。

「私は、木村さんのUFO体験にもとても興味があります。宇宙的な視点で物事を見なさいというメッセージだと、私は感じています」(稲葉医師)

 未来医療研究会は、これまで5月、7月と2回開催され、9月には3回目が行われる(4回目、5回目と開催され、名古屋、大阪でも未来医療研究会が立ち上がりました)。そのプログラムを見ていると、呼吸法やヒーリング、フラワーエッセンス、レイキ、催眠療法、カイロプラクティックなど、実にバラエティに富んでいる。土の中の多様性をそこに再現しようという思いが感じられる。しかし、ただ集めるだけではいい土壌にはならない。そこにつながりを作らないといけない。宇宙を作り上げないといけない。そのためには、どういう意識づけをすればいのか。そこを考えるのが稲葉医師の役割だ。

「未来医療研究会は、単一のイデオロギーに染める場ではありません。何かを教えるというところでもありません。参加される方が、お互いに学び合って、感じ合って、ここで得たことを、自分のホームで実践していけくださればいいと思っています。

 第2回目のときに、カイロプラクティックの先生のお話がありました。その先生は、純粋に肉体とか体に働きかける施術をします。もともとあった骨の場所、形に戻していくというやり方です。この施術の中に、霊的なものはまったく入り来みませんが、職人とか匠と言われる人たちは、霊とかスピリチュアルを語らなくても、ある技術を極めていくと、すごいところにたどり着くわけです。それと同じようなものを、この先生の施術家から感じました。自分はスピリチュアルな領域を専門にしているから、カイロプラクティックは関係ないということではなく、そこから学ぶことはたくさんあるはずです」(稲葉医師)

 非常に個性の強い代替療法家やヒーラーを、稲葉医師は「宝石」だと表現した。ただし、キラキラ光るだけのきれいな宝石ではなく、扱いを間違うと爆発する劇薬でもあると笑う。だからこそ、可能性が非常に大きいのだと言う。

 宝石としてさらに輝きを増すのか、劇薬として爆発を起こすのか、このさじ加減こそ、コミュニケーションではないか。コーマワークというのは、相手の微細な動きを感じ取り、そこからメッセージを読むという手法でもある。そこで培った稲葉医師の細やかな目配り、心配りが、未来医療研究会で生かされているのだ。この研究会が、どう展開していくのか、私には楽しみで仕方がない。ここ何年か、医療の変革の流れに滞りを感じていた身としては、また歯車が動き始めたワクワク感をもらった気がする。

 

月刊ハイゲンキ2014年9月号の「行動派たちの新世紀」に掲載したものです。

月刊ハイゲンキは、真氣光の㈱エスエーエスが毎月発行している会報誌です。

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