私はずっと自分らしさを探し求めて生きてきました~溝呂木りほちゃんインタビュー

ヤッサンNetwork 第3回


――初めての詩集が出ましたが、今の気持ちは?

梨穂 昔からためてきた自分の気持ちを、柴田(保之)先生に出会って、それが出せるようになりました。それだけでも私にとっては大きな変化でした。

なのに、詩集まで出せるなんて、夢にも思っていませんでした。

私は重度障がい者で、まわりから見たら、何も考えていない、何も感じていないと思われるような人だけれども、この詩は私のものだし、私の言葉でしかないのだから、このことを、どんどんと世の中に伝えていきたいと思います。

私の体はあまり強くないから、たくさん仲間を作って、広げていきたいと思います。

 

――どういう人に読んでもらいたいですか?

梨穂 きんこんの会などに出ている(私たち重度障がい者に対して)理解のある人にも読んでもらいたいですが、一般に近い人、あまり理解していないというか、あまり(障がい者)とかかわってきていない人に読んでもらえたら、一番うれしいです。

 

――梨穂ちゃんたち重度の障がいのある人は、何も考えてない、言葉がないという偏見があると思うけど、そうじゃないよと伝えたいのですか?

梨穂 同じ人間だし、同じように物事を考えて感じて生きているのだから、その存在を否定せずに受け入れてほしい。


――梨穂ちゃんの詩には「自分らしさ」という言葉がよく出てくるのですが、自分らしく生きるというのは大切ですね。

梨穂 今、ありのままとか、いろいろ言われているけれども、それは大事だと思います。ありのままの姿、自分らしさ、これは探すのは大変だけど、自分らしさ、私らしさを見つけることは大切だと思います。

 

――梨穂ちゃんも、自分らしさをずっと探してきたのですか?

梨穂 今、普通に生活している人も、いろいろなことに悩んでいると思います。けれども、私たち重度障がい者は生きることに必死で、ほかにすることもなく、病室でじっとしている毎日では、やっぱり自分の内側で自分だけの物語を作り、自分らしさを見つける旅に出ていました。

 

――自分だけの物語の中の梨穂ちゃん自身のイメージですが、そこでは走り回ったりしているのですか?

梨穂 昔はそうでした。いくら重度障がい児でも、夢や希望はあるし、走り回りたいし、みんなとしゃべりたいと、昔は思っていました。今は、この姿の自分が好きになったし、これが自分だから、高望みするのはやめて、自分の詩をたくさん作ることに専念しています。

――まわりの人は、梨穂ちゃんのこと、かわいそうだと見ることが多いと思いますが、自分ではどう感じますか?

梨穂 まわりの人は、梨穂ちゃんは体が不自由でかわいそうだねと思っていると思います。でも、私は不幸だと思っていないし、今、こうやって病院の中で生きて、ときどき、柴田先生に通訳してもらって、詩をたくさん作って、それだけで私は幸せです。


 

――柴田先生との出会いについて教えてください。

梨穂 母は、私に言葉があって、意志があるってこと、わかっていてくれたけど、それを証明するものがなかったし、確かめることもできなかったので、すごくしんどかったと思います。

柴田先生にお会いしたことで、自分が思っていたことは正解だったとわかり、安心してくれたと思います。そのことがとてもうれしいです。

――柴田先生とお会いして、梨穂ちゃんは変わりましたか?

梨穂 すごく視界が広がりました。私は、このまま言葉のない世界で生きていくのだろうと思っていたので、信じられないような気持ちでした。

――お母さんに言いたいことありますか?

梨穂 本当にいろんなところで、いろんな人と闘って、つらいこともあったと思うけれども、こんな私のために、必死いなってやってくれたことには、本当に感謝しています。

――お母さんはいろいろとバトルをしてきたのですね。

梨穂 私のために闘ってくれているのはうれしかったけれども、お母さんの評判が下がるのを見て嫌な気持ちになりました。


――氣歩の通訳についてはどう思いますか?

梨穂 氣歩ちゃんは若いから、いろんなジャンルの話ができます。だから、また、柴田先生とは違う気持ちで、違う言葉で話せます。すごくうれしいです。出会えて良かったです。

柴田先生だけでは、通訳の人数が足りないというのもあるし、いろんな年齢や性別の人が通訳をしてくれると、たくさんの話ができるから、もっと通訳ができる人が出てきてほしいです。

―― 氣歩は、中学生なのにこうやって重度の障がいのある人たちの通訳ができて、まわりから期待されているのを感じて、ときどきプレッシャーを感じることがあるみたいです。何かアドバイスをしてあげてください。

梨穂 そんなことは思わなくてもいいと思います。確かに、氣歩ちゃんは期待されるべき人間だけど、それを感じて、自分がきつくなるのは違うと思います。

今まで、障がいをもった人とかかわってきたのと同じように、これからも普通に接していけばいいのではないでしょうか。


――新しい詩があったら発表してください。

 

私の生きる意味

 

私は長い間、生きる意味を探してきた。

なぜ、私は生まれてきたのだろう。

なぜ、私は今ここで、病院の中で、静かに生きているのだろう。

きっと、その答えはだれにもわからない。

今、少しずつわかりはじめてきた。

私はどんな姿だった。

どんなに不自由な体だった。

ちゃんと言葉がある。

ちゃんと心がある。

そういうことを伝えに来たのかなあと、

最近思う。

まだ、私は私の私らしさの旅に出る。

新しい私を見つけるために。

今日もまた旅に出る。

 

*2014年12月に、氣歩の指談による通訳でインタビューしたものです(インタビュアー/小原田泰久)

 

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溝呂木梨穂(みぞろぎ・りほ)1992年7月23日生まれ。生後すぐに脳に酸素がいかないというトラブルがあり、脳に重度の障がいを負う。体の自由と言葉を失う。2012年5月20日、国学院大学の柴田保之先生との出会いによって、ずっと自分の世界の中だけで紡いできた詩を発表することができるようになった。これからも、詩作を続け、自分のような重度の障がいがある者にも、思いも言葉もあることを訴えていきたいと言う。